SENDAI CITY LIFE MAGAZINE

仙台で暮らす、東北で生きる

元通りにはならない、から(仙台で考え中)

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仙台は新緑の時期が最も美しいと思う。

緊急事態宣言が解除された。まだまだ不要不急の外出は避けなければいけないけれど、よく晴れた日に、仕事のついでに少しだけ定禅寺通りを散歩する。木々に陽の光が当たって、若々しい緑の葉のひとつひとつが映える。降り注ぐ木漏れ日を浴びながら遊歩道を歩けば、気持ちいい風が吹き抜けて、私たちの目の前に起こっていることを一瞬だけは忘れられる気がした。

新型コロナウイルス感染症の影響で、休業・営業縮小を余儀なくされた店舗・施設・企業はとても多い。職を失った方、借金を背負った方など、様々な境遇の人がいる。「はやく元の生活に戻りますように」というメッセージが広がるが、正直に言ってそんなものは幻想だと思う。元通りになることなんてない。震災の時もそうだった。今ここにあるのは東日本大震災が起こった後の世界だ。沿岸部には大きな道路と公園、そしてとてつもない高さの堤防が作られた。津波の被害を直接的には受けなかった仙台の中心部においても、東日本大震災の爪痕はいくつも残っている。そしておそらく、新型コロナウイルス感染症の影響もずっと残っていくのだろう。

僕は仙台で生まれ、25年住んでいる。大学進学、就職、転職と、仙台を離れることのできるタイミングは何度もあった。しかし、結局ずっと仙台にいる。理由は自分でもわからない。仙台が好きかと聞かれたら好きと答えるが、それはきっと長く住んだ故の愛着だろう。25年の間にも、この街は絶えず変化し続けていて、通っていたお店、遊んでいた公園、住んでいた家、歩いた道、それら数え切れないものたちがなくなったり形を変えたりしている。

私の好きな仙台、を語りうる不変のものなど、どこにもないのかもしれない。自然災害、疫病、戦争、社会情勢、そして人々の気まぐれによって、街はどんどん姿を変えていく。だからこそ、瞬間の切り取りでもいいから、この街について何か書いてみようと思い立った。元通りにならない日常のありのままを、良いことも悪いことも、未来も過去もすべて。SENDAI CITY LIFE MAGAZINEとは、止まらない時間と変化の中で私の好きな仙台・東北について考える、WEBマガジンでもブログでもエッセイでもローカルメディアでもある空間です。