東京に住む先輩に、仙台から仕送りをする
仙台で学生生活を送る中で、ありがたいことに、かけがえのない先輩とたくさん出会うことができた。多くの先輩たちは仙台を離れてしまい、なかなか会う機会がないが、SNS上などで交流をしたり、ときどきいっしょに旅行に行ったりしている。
これは3年前にみんなで福島に行った時の写真。海が綺麗だった。
そんな先輩のうちのひとりが、Twitterでこんな投稿をしていた。
実は親から仕送りというものをもらったことがなくて、あの雑多な、福袋みたいな感じに憧れてます。誰かぼくに仕送りくれませんか。仕送り返しを仕送りますので。。
— はせがわりゅうや (@hase_csv) 2020年5月1日
これはチャンス。日頃の感謝を「仕送り」という名目で伝えることができる。私はすぐさま先輩に連絡をし、”仕送り選手権”にエントリーすることにした。ところで、後輩から送るものが本当に「仕送り」と呼べるのだろうか、という疑問は一旦スルーしておいた。
「仕送り」とは何か・自分の強みは何か
まず、「仕送り」とはなんだろうか。
し おくり【仕送り・為▽送り】
( 名 ) スル
生活・勉学を助けるために、金品を送ること
先輩は(おそらく)ひとり暮らしだ。このコロナ禍で外食がしにくくなり、食に困っているに違いない。そう思った私は、主に食べ物、とくに「ごはん・お酒のおともになるもの」をベースに仕送りのラインナップを考えることにした。
また、この"仕送り選手権"に参加しているのは、私を含めて6人いるようだ。さすが先輩、謎の人望がある。そうなると、他の参加者と差別化を図って、すばらしい仕送りを送る人、仕送り神(しおくりしん)になりたい。他の参加者を見るに、先輩の育った故郷・仙台から参加するのは私だけだ。同郷の強さを生かし、仙台ならでは、東北ならではの物を送ろう。こうして私は仕送り神への階段を着実に登り始めた。
これが私の仕送りだ
こうして私が発議し、脳内委員会・脳内衆議院・脳内参議院を全会一致で通過した仕送りのベストメンバーはこちら。ひとつひとつ紹介していこう。
「にしきや」のレトルトカレー
宮城が全国に誇るレトルトカレーの雄・「にしきや」のレトルトカレー。ごはんのおともといえばカレーだろ、というネパール人もびっくりの短絡的な発想によりチョイスした。
「にしきや」は、「無印良品のカレー」を製造しているにしき食品のプライベートブランドだ。あの「MUJIカレー」が宮城で製造されていることは、宮城県民にとっては狩野英孝を輩出していることと同じかそれ以上の誇りであるのだ。
www.muji.com
そんな「にしきや」は、とにかく数え切れない種類のカレーを販売している。「ビーフカレー」「チキンカレー」といった定番から、「麻辣キーマカレー」「ラタトゥイユカレー」といった変わり種まで。その中でも、もっとも味が想像できない「シャンピニオンカレー」を忍び込ませてみた。なお、私も食べたことがないので、どんな味かはまったくわからない。
余談だが、にしき食品は母の職場である。このレトルトカレーは、母に頼んで社割で購入してもらった。母が製造ラインで汗をかき懸命に作ったレトルトカレー。いわばこれは私からではなく、私の母からの仕送りだ。まさに仕送りとしてはぴったりではないか。こうして私は仕送り神への階段を一気に駆け上がった。
「陣中」 具の9割牛タン 仙台ラー油
仙台が全国に誇る食べ物のスタンダードといえば、牛タン・笹かま・ずんだ餅の3トップだ。この3トップは、メッシ・スアレス・ネイマールのMSNにも匹敵する破壊力を有する。さらに、萩の月というシャビ、喜久福というイニエスタもいる。仙台はバルセロナだ。ドリームチームだ。とはいえ、牛タンは高い。あと、クール便を使いたくない。なぜなら先輩は冷蔵庫を持っていないから。などというめんどくさい諸々の事情により、比較的安価で、常温で送ることのできる仙台名物、いわばセルジ・ロベルトのような使い勝手の良いプレイヤーが必要だ。そこで選ばれたのが、「陣中」 具の9割牛タン 仙台ラー油だ。なお、ここまでサッカーで喩えたものの、先輩はサッカーがそこまで好きではないので、おそらく伝わっていない。
ごはんのおともとしても、お酒のおつまみにも最適な、優秀なバイプレーヤー。噛めば噛むほどおいしい。ヒルナンデス、嵐にしやがれ、マツコ&有吉かりそめ天国など、さまざまなテレビでも紹介され、知名度が少しずつ上がっている。
そして今回、先輩に送ったのは、ただの仙台ラー油ではない。なんと、期間限定パッケージで、みやぎ応援ポケモンのラプラスとコラボレーションした特別バージョンだ。先輩が宮城を離れてから、新たに生まれたムーブメントを封じ込めた、今のふるさとが知れるすてきな仕送り。ビールとの相性最適な牛タンサイコロもついでに入れた。こうして私は仕送り神の後継者争いに二歩リードし、仕送り官としての定年延長が閣議決定された。
くどうれいん『うたうおばけ』
ここまでで、胃袋を掴み、郷愁を覚えさせた次期仕送り神こと私。ここで決定打として「カルチャー」を仕送りしたい。なぜなら、先輩とはお笑い番組や書籍、YouTubeなどをおすすめし合う関係性だったからだ。
選んだのは、くどうれいんの『うたうおばけ』だ。盛岡に生まれ、仙台で大学生活を送った著者による、さまざまな"ともだち"との愛おしい日常を、リズミカルで健やかな文体で綴ったエッセイ集だ。今、いちばん人におすすめしたい本でもある。
詳しい感想はこちらに書いた。
ああ、食だけでなく本を送った参加者は私以外にいないだろう。こうして私はついに"仕送り神"になったのでした。めでたしめでたし。
『うたうおばけ』くどうれいん|エッセイ・評論|書籍|書肆侃侃房
”仕送り選手権”のようすはこちら
八百万の仕送りの神がいることがわかる。それにしても、Twitterで呟いただけで6人から仕送りが来る先輩の人徳、すごいな。
仕送りを送ってみて
今回、仕送りをしてみて思ったのは、自分の地元に食べてもらいたい・見てもらいたいと思えるものがたくさんあることのしあわせと、それを送りたい人がいることのしあわせだった。だれかの両親になり代わり、その人の生活について思いを馳せ、何が必要か、何があったら嬉しいかを想像して、箱に詰めて送る。今回は入れなかったが、手紙を入れてみるのもいいなと思った。
だからこそ、これからも私はいろんな人に仕送りを送ってみたいと思う。なぜなら私は"仕送り神"になったのだから。きわめてフレンドリーな神です。クロネコメンバーズでもあります。
せっかくなので先輩がやってるラジオの宣伝
だいすきな先輩ふたりがやっているインターネットラジオ番組「A.M.SanGoCan」があるので、ぜひ聴いてみてください。
「エンジニアのtaiga(@dn0t_)と、マーケターのhase(@hase_csv)がパーソナリティを務めるキラキラバイブス全開の極貧アル中インターネットラジオ番組。」
A.M.SanGoCan (@am350can) | Twitter